この記事でわかること
- 設問で名称が指定されるフレームワークと、名前は出ないが使うべきフレームワークの違い
- 事例Ⅰ〜Ⅳそれぞれで「まず使う型」と「補助的に使う型」の早見表
- フレームワークを「与件文を仕分ける道具」として使いこなす訓練法
第1回では、過去10年・230設問のデータから「どこに力を入れるか」を見ました。第2回は、その武器となるフレームワーク(FW)の使い方を事例別に解説します。
最初に、何度でも強調したい前提から。
フレームワークは、与件文を整理して採点者に伝わる切り口で漏れなく拾うための「道具」。答案にフレーム名を書くことが目的ではない。
SWOTを使ったからといって「SWOT分析した結果」と書く必要はありません。大事なのは、強み・弱み・機会・脅威という切り口で与件文を漏れなく拾えているか、です。
フレームワークは2種類ある
過去10年の設問を分析すると、フレームワークは大きく2つに分かれます。
- 設問で名称が明示されるもの(SWOT・3C・4P)——「SWOTの観点から述べよ」のように、その型で答えることが求められる。出たら確実に取りたい。
- 名称は出ないが活用が推奨されるもの(STP・成長戦略・QCDなど)——設問に名前は出ないが、答案を構成する骨組みとして使うと漏れがなくなる。
まず①から見ていきましょう。
① 設問で名称が明示されるフレームワーク
SWOT分析 ― 最頻出
事例Ⅱ第1問の定番で、近年は事例Ⅰでも登場します(2025年)。
- 構成:Strength(強み)/Weakness(弱み)/Opportunity(機会)/Threat(脅威)
- 使いどころ:現状分析。「各要素を解答欄に30〜40字で」という形式が頻出。
最大の注意点は、内部環境と外部環境の混同です。
- 強み・弱み=内部環境(自社で変えられる)
- 機会・脅威=外部環境(自社で変えられない)
ここを取り違えると大きく減点されます。また「機会」は単なる外部の変化ではなく、自社が活かせる外部の変化を選ぶのがコツです。
3C分析 ― 事例Ⅱ第1問でほぼ隔年
SWOTと年替わりで出題される現状分析の型です。
- 構成:Customer(顧客・市場)/Competitor(競合)/Company(自社)
- コツ:3要素を均等に書く。どれかに偏らない。
3CとSWOTは素材が重なります。Companyの強み弱みがSWOTのS・Wに、Customer・Competitorの分析がO・Tにつながる、と理解しておくと両方に対応できます。
4P(マーケティング・ミックス) ― 施策の網羅チェック
事例Ⅱで「どんな施策を行うべきか」を助言するときの網羅リストです。
- 構成:Product(製品)/Price(価格)/Place(流通)/Promotion(販促)
- コツ:価格(Price)は慎重に。安易な値下げは原則NGで、価値に見合う価格設定を考えます。
② 名称は出ないが活用すべきフレームワーク
STP ― 施策の前に「誰に」を固める
- 構成:Segmentation(細分化)→ Targeting(標的設定)→ Positioning(位置づけ)
- 使いどころ:施策を答える前にターゲットを明確にする。事例Ⅱの助言問題は「ターゲット→施策」の順で書くと整います。中小企業はターゲットを絞るのが定石です。
競争戦略 ― 中小企業は「差別化・集中」
- 構成:コストリーダーシップ/差別化/集中
- 使いどころ:中小企業は規模で劣るため、価格競争(コストリーダーシップ)ではなく、強みを活かした差別化・特定市場への集中を選ぶのがセオリーです。
成長戦略(アンゾフ) ― 近年頻出の新規事業テーマに
- 構成:市場浸透/新製品開発/新市場開拓/多角化
- 使いどころ:第1回で見たとおり、新規事業の出題は後半5年で増えています。「既存の強みとの関連性(シナジー)」を示しながら、どの方向の成長かを意識して助言します。
QCD ― 事例Ⅲ生産管理の切り分け
- 構成:Quality(品質)/Cost(原価)/Delivery(納期)
- 使いどころ:事例Ⅲの「生産管理上の課題と対応策」型は、QCDのどれが論点かを与件文から特定すると漏れがありません。
その他の補助フレーム
- ファイブフォース:競争環境・脅威の深掘り(SWOTの脅威を厚くする)
- バリューチェーン:強みが工程のどこにあるかを特定する思考の地図
- 関係性マーケティング:固定客化・リピート促進(事例Ⅱで近年再注目)
事例別・フレームワーク早見表
| 事例 | まず使う型 | 補助的に使う型 |
|---|---|---|
| 事例Ⅰ(組織・人事) | SWOT、競争戦略、成長戦略 | 組織構造、バリューチェーン |
| 事例Ⅱ(マーケ・流通) | 3C、SWOT、STP、4P | 関係性マーケ、ファイブフォース |
| 事例Ⅲ(生産・技術) | QCD、成長戦略 | バリューチェーン、ファイブフォース |
| 事例Ⅳ(財務・会計) | 経営分析の3視点(収益性・効率性・安全性) | CVP、投資判断(NPV)※計算手順が中心 |
事例Ⅳはフレームワークというより「経営分析の3視点+計算手法」が中心です。第1問の経営分析は、収益性・効率性・安全性の3カテゴリから指標を選ぶのが定石で、これが事実上のフレームワークとして機能します。
与件文を「仕分ける」訓練が核心
フレームワークの真価は、与件文を読みながら「この記述は強み」「これは機会」と仕分けられるようになることです。これを鍛えるには、空欄のテンプレート(記入シート)に与件文のキーワードを書き込む練習が効果的です。
たとえば事例Ⅰなら、こんな流れで埋めていきます。
0. 与件メモ(企業概要・社長の想い)
↓
SWOT(強み/弱み/機会/脅威の4欄+クロスSWOT)
↓
競争戦略(差別化の源泉/集中する市場)
↓
成長戦略(成長の方向/活かす強み/想定リスク)
↓
組織構造(現状の課題/あるべき体制)
事例Ⅱなら「3C → SWOT → STP → 4P」、事例Ⅲなら「QCD → 生産改善 → 成長戦略」という順序です。
ポイントは、現状分析(SWOT・3C)から施策立案(STP・4P・成長戦略)へ自然につなげること。「強み(S/Company)を機会(O/Customer)に活かす」——この基本ロジックが全事例に通底します。
記入シートは自作できる。ただし「回す」のが大変
この記入シートは、紙やWordで自作しても構いません。ただ実際にやってみると、与件文PDF・記入用紙・下書きを行き来する切り替えコストが大きく、「ヒントを見ながら埋める→ヒントを隠して自力で埋める」という段階的な訓練を紙で回し続けるのはかなりの手間です。
📱 この記入シートを、そのままiPadアプリにしました
筆者が開発した「事例ドリル」(iPad専用)には、上で紹介した事例別の記入シート——事例Ⅰ:SWOT・競争戦略・成長戦略・組織構造/事例Ⅱ:3C・SWOT・STP・4P/事例Ⅲ:QCD・生産改善・成長戦略——が各欄のヒント付きで最初から入っています。
- 与件文(過去10年分同梱)と記入シートを2画面に並べて仕分け練習
- 各欄のヒントはON(見ながら埋める)/OFF(自力で埋める)をワンタップ切替——最初は型を覚え、慣れたら白紙で自力作成、という段階移行がそのままできます
- 自分の仕分けと見比べられるAIフレームワーク解答例も全年度分同梱
フレームワーク習得のコツ(まとめ)
- 設問で型が指定されたら(①):その型のラベルに沿って解答欄を埋める。SWOTなら4要素、3Cなら3要素を均等に。
- 型が出ない設問でも(②):頭の中でフレームを当てはめ、切り口の漏れを防ぐ。答案に型名は書かない。
- フレームは分析と施策の橋渡し:第1問に多い現状分析で見えた強み・機会を、後半の施策提案に接続する。
- 全事例の核は「強みを機会に活かす」:SWOTのS×O、3CのCompany×Customerを結ぶ発想。
次回:この武器で、どう練習するか
フレームワークで与件文を仕分ける力がついても、それを「合格水準の解答」に仕上げるには別の訓練が要ります。第3回では、生成AIとふぞろいな合格答案を組み合わせた具体的な5ステップ学習法——自分・AI・ふぞろいの「3者比較」や、字数を圧縮する「2段階解答法」——を解説します。シリーズで最も実践的な回なので、ぜひ続けてどうぞ。
シリーズ一覧
- 第1回:2次試験の本質と過去10年の出題傾向データ
- 第2回(本記事):事例別フレームワーク活用術
- 第3回:生成AI × ふぞろいの5ステップ学習法
本シリーズの学習フローを実践できるiPadアプリ「事例ドリル」を公開中(事例Ⅰ〜Ⅲ対応・買い切り・オフライン動作)。