この記事でわかること
- 生成AI(ChatGPT・Claudeなど)を2次試験対策に使うときの3原則と、コピペで使える添削プロンプト例
- 「自分・AI・ふぞろい」の3者比較で合格水準を掴む方法
- 字数制限を攻略する「2段階解答法」と、14週間の学習ロードマップ
第1回で「どこに力を入れるか」、第2回で「どんな武器を使うか」を見ました。最終回は、それらを使って実際にどう練習するか——生成AIとふぞろいな合格答案を組み合わせた5ステップの学習法を解説します。
この記事で解説する学習フロー(STEP 2〜4)は、筆者が開発したiPadアプリ**「事例ドリル」**でそのまま実践できます。各STEPの解説に「📱 事例ドリルなら」という補足を添えますが、アプリがなくても紙とWordで実行できる内容です。
最初に:学習を貫く3つの原則
具体的な手順に入る前に、すべてのステップに共通する「ぶれてはいけない軸」を3つ。
原則1:「自分で書いてから見せる」順番を死守する
AIの解答を先に見るのは厳禁です。必ず自分の解答を書き切ってからAIに見せる。この順番を破ると、AIの解答を暗記するだけになり、初見問題で何も書けなくなります。
原則2:「与件文の根拠」なき解答はゼロ点と心得る
第1回の大原則の再掲です。すべての文に「与件文のどこが根拠か」を自問し続けることが、得点する唯一の方法です。
原則3:1問に執着せず広く回す
AI添削は1問あたり最大3回。改善が止まったと感じたら次の問題へ。1問を完璧にするより、多くの問題で「合格水準」が書ける状態を作るほうが合格に近いです。
5ステップの全体像
「AI頼り」から「完全自立」へ段階的に移行する設計です。
STEP 1(1〜2週目): 用語 × FW をインプット
↓
STEP 2(3〜4週目): テンプレ+AIで解答を書く練習(最新年度)
↓
STEP 3(5〜6週目): 自力でテンプレを完成させる
↓
STEP 4(7〜14週目):過去問演習・自分/AI/ふぞろいの3者比較
↓
STEP 5(試験1ヶ月前〜):80分模試・人間フィードバック
最初にAIが作った型で学び、徐々に自力でできることを増やす。初見問題で自力でフレームワークを作れる状態がゴールです。
STEP 1(1〜2週目):用語 × フレームワークをインプット
戦場の地図を描く段階。第1回のデータ分析で判明した最重要用語から固めるのが効率的です。
- 事例Ⅳ(財務)の最重要:固定費・変動費・減価償却費・キャッシュフロー・税率・財務指標
- 事例Ⅰ〜Ⅲの最重要:顧客・戦略・新規事業・強み
100字トレーニング
用語を「自分の言葉で100字以内で説明できる」状態にします。
- 用語を見て、まず自分の言葉で定義を書く(辞書・AIを見ない)
- 模範定義と照合して差分を確認
- AIに添削を依頼し、試験で使える表現に磨く
AI添削プロンプト例:
用語「競争優位」について、私が書いた説明:
「他社に真似されにくい独自の強みで市場での優位性を保つ状態」
これを診断士2次試験の観点で添削し、
①不足している視点 ②より正確な表現
③試験で使える100字以内の説明 を教えてください。
並行して、第2回のフレームワーク早見表で「どの事例でどの型を使うか」を頭に入れます。「この用語→このFWの欄→この事例のこの設問」という連想の訓練が、次のステップの土台になります。
📱 事例ドリルなら:頻出用語集を同梱した「100字トレーニング」機能で、①初回の説明を書く→②評価プロンプトを自動生成してコピー→③AIの評価を貼り付け保存→④改善版を書く、の1セットを記録できます。初回の説明は消えずに残るので、成長の差分が見えます。
STEP 2(3〜4週目):テンプレート+AIで解答を書く練習
最新年度(令和7年度)の問題で「解答を書く技術」を訓練します。第2回で紹介した記入テンプレートに与件文のキーワードを書き込み、それを基に解答してAIに添削してもらいます。
最重要の工夫:2段階解答法
第1稿:字数を気にせず論点を出し切る
↓ AI添削①(論理・根拠・用語)
第2稿:字数を守りながら圧縮・整理する
↓ AI添削②〜③(最大3回で完成)
なぜ2段階なのか。 第1稿から字数を気にすると、脳が「削ること」を先に考えて論点が出し切れません。まず全部書き出してから、どれを残しどれを切るかを判断する。この圧縮の判断力こそ、80字・100字・150字という字数制限の中で問われる最重要スキルです。
AI添削プロンプト例
診断士2次試験の採点基準で以下の解答を評価し、改善点を指摘してください。
設問:[設問文]
私の解答:[解答文]
与件文の根拠(引用):[該当箇所]
評価観点:①与件文根拠の明示度 ②FWの活用度 ③用語の正確さ
④論理の一貫性 ⑤0〜20点で採点し理由を提示
事例Ⅳは計算を先にAIに聞かない
財務の計算問題は、AIに「解いて」と頼まず必ず自力で計算します。AIには「計算過程の確認」と「考え方の解説」だけを依頼する。これは後述の事例Ⅳ対策でも繰り返します。
📱 事例ドリルなら:与件文と記入シート(ヒントON)を2画面に並べて仕分けし、第1稿・第2稿を別々に保存できます。設問ごとの目標字数に対して「未達/範囲内/超過」が色で即座に分かるので、第2稿の圧縮練習に集中できます。壁打ちプロンプトは解答・設問・評価観点を埋め込んだ形でワンタップ生成——コピーしてお好みのAI(ChatGPT/Claude等)に貼るだけです。
STEP 3(5〜6週目):自力でテンプレートを完成させる
AIに頼らず、白紙のテンプレートに自力でキーワードを書き込む段階です。
年度の使い分け
| 年度 | 使い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 令和7年度 | 「卒業試験」 | STEP 2で記入済みの完成版と比較できる |
| 令和6年度以前 | 「初見の素材」 | 完全自力でFWを作る本番に最も近い訓練 |
手順
- 与件文を読み、白紙のテンプレートに自力でキーワードを書く
- 完成版と比較し、抜け漏れを「弱点リスト」に記録
- AIに「このFW適用は妥当か・抜け漏れは」を確認(1〜2回)
- 改善したFWで各設問に解答(STEP 2と同手順)
FW確認プロンプト例:
令和7年度A社の与件文からSWOTに当てはめたキーワードは以下です。
強み:「薄板加工・安全加工ノウハウ・林業家ネットワーク」
弱み:「子息への属人化・既存社員の理解不足」
機会:「木育ニーズ・教育施設での需要」
脅威:「競合多数・トレンド変化の速さ」
抜け漏れ・誤分類を指摘し、追加すべきキーワードと
与件文の根拠箇所も教えてください。
重要:令和7年度の完成版を、STEP 3の自力作成より前に見てはいけません。卒業試験の答えを先に見るようなものです。
📱 事例ドリルなら:STEP 2→3の移行は「ヒントトグルをOFFにするだけ」です。白紙シートに自力記入したあと、同梱のAIフレームワーク解答例を隣のペインに開いて見比べ、抜け漏れをその場で弱点リストに記録。弱点は事例×年度×フレームワーク単位で溜まり、あとから該当箇所に戻って復習できます。
STEP 4(7〜14週目):過去問演習・3者比較分析
STEP 3のサイクル(FW作成→解答)を令和5年度以前で反復します。ここで合格への鍵になるのが3者比較です。
3者を並べて比較する
| 比較対象 | 役割 | 注目点 |
|---|---|---|
| 自分の解答 | 現在の実力 | 与件根拠が明確か・用語が正確か・論理が整合か |
| AIの解答 | 論理的な「べき論」 | FWでの整理・用語の使い方(ただし完璧すぎる点に注意) |
| ふぞろい合格答案 | 「合格水準」の現実 | Aランクに共通するキーワード・不完全でも受かる範囲 |
なぜ「ふぞろい」が必要か
AIの解答は論理的すぎる傾向があります。 実際の試験では、完璧でなくても合格できます。「ふぞろいな合格答案」は「これで受かった」という現実の基準を示す唯一の教材で、Aランク答案に共通するキーワード=採点官が必ず拾うキーワードを教えてくれます。
3者比較プロンプト例
以下の私の解答とあなたの解答を比較し、
①FWの活用度(QCDのどれを使えているか)
②用語の正確さ ③論理の一貫性(与件根拠の明示)
を各0〜5点で評価し、改善点を具体的に指摘してください。
私の解答:[解答文] / 設問:[設問文] / 与件文(要約):[与件文]
原則:FW作成と解答作成は同じ回数
「FWを作る練習」と「FWを使って解答を書く練習」は同回数行います。どちらか一方では本番に通じません。また、ふぞろいでBランク以下になりやすい事例を特定し、得意を伸ばすより苦手の底上げを優先します。
データを活かした演習の着眼点(第1回の復習)
過去10年のトレンドを意識して演習すると効率が上がります。
- 事例Ⅳ:投資意思決定(NPV・CF・処分価額)が近年の最重点。設備投資の採否をNPV法で多段階に解く練習を厚めに。
- 事例Ⅰ〜Ⅲ:「強みを活かした新規事業×組織対応」のパターンに慣れる。
- 事例Ⅱ:第1問はSWOT・3Cが年替わり。どちらが来ても書けるように。
📱 事例ドリルなら:3者比較は専用の比較ビューで行えます。自分の解答・同梱のAI解答例・参考解答例(ふぞろいのキーワードや予備校解答をお手元の書籍から手入力)を3カラムで並置し、評価観点のチェックリストで自己採点。紙とアプリを往復して見比べる手間がなくなります。演習は「演習◯回目」としてバージョン保存され、同じ年度を繰り返し解けます。
STEP 5(試験1ヶ月前〜):模擬試験 × 人間フィードバック
80分で4問を解く実戦力を仕上げ、AIが苦手な「採点官の視点」を人間のフィードバックで補います。
80分シミュレーションの時間割
- 与件文精読:15分
- FW仕分け:5分
- 解答骨格(各4分×4問):16分
- 記述(各10分×4問):40分
- 見直し:4分
時計を使い、本番と同じ緊張感で行います。終了後、AIに「4問分の答案を時間効率と得点最大化の観点で改善提案して」と依頼し、時間切れで薄くなった問題の優先順位を確認します。
本番は手書きです。この段階では、キーボードだけでなく手で書く練習も混ぜてください(事例ドリルはApple Pencilでの手書き解答に対応しており、原稿用紙風のマス目で字数の目安を見ながら書けます)。
コミュニティ(タキプロ・一発合格道場)の活用
合格者が無料で情報を公開している貴重なリソースです。STEP 3修了後(自力でFWを作れる状態)に参加するのが最も吸収できます。基盤が薄い段階で参加してもフィードバックを活かしにくいためです。
- タキプロ:合格者による解答解説・添削。自分・AI・ふぞろいの比較後に持ち込むと最も有益。大人数で運営されているため、2次試験の時期になると毎週勉強会が開催される。
- 一発合格道場:採点官視点のフィードバック。記述の「読みやすさ」「印象」などAIが評価できない軸が得られる。少数精鋭で運営されているので勉強会やセミナーの開催は少ない。
人間フィードバックでしか得られないもの
答案を読んだときの印象(論理的でも読みにくい解答は評価されにくい)、加点されやすい要素、用語の自然な使い方(無理に詰め込んだ解答は読めば分かる)。これらは合格者・受験仲間の添削で初めて気づけます。
事例Ⅳ(財務・会計)の特別対策
事例Ⅳだけは、AIで演習量を代替できません。市販の計算問題集が必須です(この学習法の性質上、事例ドリルも事例Ⅳは収録していません。財務は問題集で、論述3事例はアプリで、と割り切るのが筆者の推奨です)。
学習方針
- まず問題集で計算パターンを体に染み込ませる(自力で解くのが前提)
- 計算後にAIで「過程の確認」「ミスしやすいポイント」を解説してもらう
- 過去問の事例Ⅳは3回以上繰り返す
AIの使い方(やってはいけない/正しい)
「この問題を解いて」 ← ❌
「私の計算過程が正しいか確認して」 ← ✅
「NPV計算で機会費用を考慮する手順を教えて」 ← ✅
第1問(経営分析)の合格答案の型
[指標名]は[数値]であり、同業他社の[数値]と比較して[高い/低い]。
これは[与件文の根拠]によるものであり、[経営上の問題点]を示している。
数値の高低を言うだけでは得点になりません。「なぜその値になるのか」を与件文の経営状況と結びつけるのが採点ポイントです。
14週間ロードマップ(週5〜7時間想定)
| 時期 | STEP | メイン作業 |
|---|---|---|
| 1〜2週 | 1 | 最重要用語の100字トレーニング・FW通読 |
| 3〜4週 | 2 | 令和7年度・全事例の2段階解答(AI添削最大3回) |
| 5〜6週 | 3 | 令和7年度の自力FW作成(卒業試験)→令和6年度の初見作成 |
| 7〜8週 | 4 | 令和5年度・全事例の3者比較 |
| 9〜10週 | 4 | 令和4年度・全事例の3者比較 |
| 11〜12週 | 4 | 令和3年度・弱点事例の集中補強 |
| 13〜14週 | 5 | 80分シミュレーション・コミュニティ参加 |
| 直前期 | 5 | 最重要用語の最終確認・A4凝縮メモ作成 |
1次試験が8月上旬、2次試験が10月下旬——1次試験後から始めると約11〜12週しかありません。このロードマップを圧縮して回すなら、環境構築(教材の用意・テンプレート作成)に使う時間を最小化することが最初の分かれ目になります。
やること / やってはいけないこと
やること
- 必ず自分で書いてからAIに見せる(逆順厳禁)
- すべての文に「与件文のどこが根拠か」を自問する
- 第1稿は論点を出し切り、第2稿で字数内に圧縮する
- AI添削は最大3回。止まったら次へ
- 3者比較(自分・AI・ふぞろい)を全演習で実施
- 最新年度はFW確認用、それ以前は初見訓練用に使い分ける
- 事例Ⅳの計算は必ず自力で解いてからAIで確認する
やってはいけないこと
- AIの解答を先に見て暗記する
- 与件文を貼らずに「良い解答を書いて」と頼む
- 事例Ⅳの計算をAIに解かせる
- AIの回答を検証なしに採用する
- 1問に長時間執着する
- 完成版を自力作成の前に見る
- フレームワークを使うこと自体を目的にする
まとめ:合格に必要な4つの力
2次試験は記述式のため「正解を覚える」学習は通用しません。必要なのは次の4つで、いずれも繰り返し練習でしか身につきません。
- フレームワークで与件文を仕分ける力(STEP 1〜3)
- フレームワークを使って論理的な解答を書く力(STEP 2〜4)
- 字数の壁の中で論点を圧縮する力(2段階解答法)
- 採点官が加点するキーワードの感覚(ふぞろい+人間フィードバック)
AIは練習の質を上げる強力なツールですが、練習量は代替できません。第1回のデータで「どこに力を入れるか」を知り、第2回のフレームワークで「武器」を持ち、第3回の5ステップで「練習」を回す——この3つが揃ったとき、合格は現実的な目標になります。
「自分で書いてからAIに見せる」という原則を守り続けることが、合格への唯一の道です。
この5ステップを、iPad 1台で回すために作ったアプリ
最後に改めて紹介させてください。この学習法で、「与件文PDF・記入用紙・下書き・解答・比較教材の往復」を効率的に実施するために開発したのが、iPadアプリ「中小企業診断士2次試験事例ドリル」です。学習法作成者がアプリの開発者でもあるため、この学習法に最適化されています。
この記事のSTEPとの対応:
| 記事のSTEP | 事例ドリルの機能 |
|---|---|
| STEP 1(用語インプット) | 100字トレーニング(頻出用語集同梱・初回→AI評価→改善版を1セット保存) |
| STEP 2(ガイド付き演習) | 与件文×記入シートの2画面並置・ヒントON・2段階解答・字数の色判定 |
| STEP 3(自力演習) | ヒントOFF・AIフレームワーク解答例との比較・弱点リスト |
| STEP 4(3者比較) | 比較ビュー(自分/AI解答例/参考解答例の3カラム+自己採点チェックリスト) |
| STEP 5(実戦) | Apple Pencil手書き解答(原稿用紙風マス目)・解答のMarkdown書き出し(勉強会への持ち込みに) |
- 過去10年分(2016〜2025年度)の与件文・設問・AI解答例を同梱(事例Ⅰ〜Ⅲ)
- iPad専用・買い切り(サブスク・広告なし)・完全オフライン動作
- 解答データは端末内のみに保存(外部送信なし)。壁打ちはプロンプト生成→お好みのAIにコピペする方式なので、ChatGPTでもClaudeでも使えます
- ※事例Ⅳは非収録です(上述のとおり、財務は市販の計算問題集での反復を推奨します)
1次試験後の限られた時間を、環境構築ではなく練習そのものに使ってもらえたら嬉しいです。
シリーズ一覧
- 第1回:2次試験の本質と過去10年の出題傾向データ
- 第2回:事例別フレームワーク活用術
- 第3回(本記事):生成AI × ふぞろいの5ステップ学習法
本シリーズの出題傾向分析・用語集・フレームワーク教材は、過去10年分の設問データをClaudeで分析して作成しました。